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ICT・EducationNo.43 > p10〜p13

報告
教員の情報モラル教育の指導観と普及のための改善事項について
─小中高の校種間による比較・分析─
青森県総合学校教育センター 相澤 崇
shu@aizawa.name
1.はじめに
 小中高等学校で新学習指導要領が告示され,小中学校では総則,各教科,道徳で,高等学校では総則,各教科で情報モラル教育の必要性が示された。※注1・注2・注3
 しかし,新学習指導要領に示される情報モラル教育の指針やモデルカリキュラム※注4・注5などを参考にして,具体的な情報モラルカリキュラムを構成する際には,次の点が課題として挙げられる。
 モデルカリキュラムと比較すると新学習指導要領における情報モラルの指導内容は限定的であり,その取り扱い時期が示されていない。そのため,一部の指導内容や取り扱い時期については,学校の方針や教員の考えに委ねられていると捉えることができる。よって,新学習指導要領における具体的なカリキュラムを検討するためには,教員に委ねられる情報モラルの各指導内容の適切な指導時期について,教員の考えを明らかにする必要がある。
 そこで,本研究は,新学習指導要領下での小中高等学校で望ましい連係のあり方や情報モラル教育の普及のための課題を検討する目的で,小中高等学校の教員に対して,質問紙調査を行い,所属する校種ごとに比較分析を行った。
2.調査方法
 2008年10月から12月にA県教育センター情報教育系の研修を受講した教員198名(小学校86名,中学校59名,高校53名)に対して情報モラルの指導に関する質問紙調査を行った。研修講座初日に質問紙を一斉配布し,2〜3日間の講座期間中に各自での回答を求め,講座終了時に一斉回収をした。
 質問紙調査にあたって,情報モラルの指導内容を明らかにするために,2005年に埼玉県教育委員会から発表された「情報モラル教育の指導資料」※注4と2007年に日本教育工学振興会から示された「情報モラルキックオフガイド」※注5を参考にした。これらの資料に基づいて,A県教育センター情報教育担当指導主事7名と協議し,情報モラルの指導内容を11項目に分類した(表1)。

No.指導内容
1プライバシーや人権
2個人情報
3肖像権
4著作権と知的財産権
5情報の信頼性
6有害情報
7ネットワーク上のエチケット
8健康上の問題
9コンピュータウィルス
10不正アクセス
11ネットワーク犯罪
▲表1 情報モラルの指導内容
3.質問紙構成
 調査内容は,「情報モラルの指導経験」,「適切な指導時期」,「普及のための改善事項」である。

(1)情報モラルの指導経験

 情報モラルの指導経験について質問した。過去1年以内における授業での情報モラル指導経験回数について回答を求めた。

(2)適切な指導時期

 11の指導内容について,子どもの発達段階や教科との関連を考え,適切な指導開始時期について回答を求めた。指導の時期を「小学校低学年」,「小学校中学年」,「小学校高学年」,「中学校」,「高校」に分類して回答を求めた。ただし,関連する道徳的内容を含めないこととし,それらについては適切な時期に道徳の時間で指導を行うことと仮定した。

(3)普及のための改善事項

 今後,学校において情報モラルを実施していくために,表2に示す改善事項10項目について回答を求めた。各項目に対して「大変必要である」,「わりに必要である」,「どちらともいえない」,「あまり必要でない」,「全く必要でない」の5件法にて回答を求めた。

No.項目
1指導時間の確保
2指導力向上のための研修
3情報教育のリーダー増員
4情報通信機器の利用技術の向上
5子どもの情報通信機器の利用実態の把握
6子どもの情報モラルの能力の測定方法
7情報モラル指導事例集,資料集
8学校における情報通信機器の普及・整備
9家庭への啓蒙活動
10地域・社会からの教育
▲表2 情報モラル教育の普及のための改善事項
4.結果と考察
(1)情報モラルの指導経験

 調査の結果,有効回答は184名(男性142名,女性42名)となった(有効回答率:92.9%)。
 回答者の過去1年以内における情報モラルの指導経験について集計結果を表3に示す。
 過去1年以内における情報モラルの指導経験者は,小学校56.1%,中学校57.4%,高校で60.4%であった。カイ2乗検定の結果,校種による指導経験の差異は認められなかった。
 小学校
N=82
中学校
N=54
高校
N=48
指導経験あり46(56.1%)31(57.4%)29(60.4%)
指導経験なし36(43.9%)23(42.6%)19(39.6%)
回数の平均値0.81.11.5
標準偏差1.12.03.1
注)カッコ内は割合を示す。
▲表3 過去1年以内での情報モラルの指導経験

(2)適切な指導の時期

 発達段階に応じた適切な指導開始時期の結果を図1に示す(割合は最頻値のみを記す)。
 校種に関わらず,多くの教員は学習指導要領上に具体的な指導時期が明示されていない小学校高学年において,適切な指導の時期であるとする指導内容が多く示された。また,多くの教員は一部内容を除き(高等学校:健康上の問題),小学校低学年や高等学校からの指導は不適切と考えていることが明らかになった。
 さらに,日常モラルと関連性が高い情報モラルの指導内容については,比較的早い時期からの指導が適切と考え,技術的な理解が必要とされる情報モラルの指導内容については比較的遅い時期からの指導が適切と考えていると思われる。
 しかし,一部の指導内容の指導時期について,小学校の教員と中・高等学校の教員では差異が認められ,小学校の教員は,子どもの発達段階,教科との関連,情報通信機器の利用実態やトラブルの発生状況などを総合的に考えて,中高等学校の教員が考える時期より,早い段階からの指導が適切と考えていると推察される(「3.肖像権」,「4.著作権と知的財産権」,「7.ネットワーク上のエチケット」,「9.コンピュータウィルス」,「11.ネットワーク犯罪」)。

適切な指導時期の結果
注)グラフの左の数字は,表1のNo.と対応している。
▲図1 適切な指導時期の結果

(3)普及のための改善事項

 各項目に対する回答は,肯定的な回答から順次5から1点に得点化を行い,平均値と標準偏差を算出した。普及のための改善事項の結果を表4に示す。

指導内容小学校
N=82
中学校
N=54
高校
N=48
指導時間の確保4.40
(0.77)
4.43
(0.66)
3.85
(0.97)
指導力向上のための
研修
4.48
(0.65)
4.52
(0.57)
4.17
(0.78)
情報教育の
リーダー増員
4.18
(0.85)
4.19
(0.85)
4.15
(0.83)
情報通信機器の
利用技術の向上
4.39
(0.77)
4.46
(0.57)
3.98
(0.98)
子どもの情報通信機器の
利用実態の把握
3.90
(0.88)
4.19
(0.59)
4.17
(0.86)
子どもの情報モラルの
能力の測定方法
3.59
(0.83)
3.61
(0.69)
3.69
(0.83)
情報モラルの
指導事例集・資料集
4.20
(0.82)
4.04
(0.75)
4.10
(0.75)
学校における情報通信機
器の普及・整備
4.61
(0.64)
4.39
(0.76)
3.96
(0.97)
家庭への啓蒙活動4.27
(0.75)
4.33
(0.73)
4.10
(0.83)
地域・社会からの教育3.99
(0.82)
3.91
(0.81)
3.79
(0.82)
注)カッコ内は標準偏差値を示す。
  網掛けは,校種間による差異が認められた。
▲表4 普及のための改善事項の平均値

 校種に関わらず,全ての項目で肯定的な値が示され,多くの教員は,情報モラル教育の普及には,改善すべき事項が多くあると考えていることが示された。小学校では,「学校における情報通信機器の普及・整備」,「指導力向上のための研修」,「指導時間の確保」,中学校では,「指導力向上のための研修」,「情報通信機器の利用技術向上」,「指導時間の確保」,高校では,「指導力向上のための研修」,「子どもの情報通信機器の利用実態の把握」,「情報モラルの指導事例集・資料集」,「家庭への啓蒙活動」が改善すべき事項として高い値が示された。
 校種による差異を検討するために項目ごとに一元配置の分散分析を行った。その結果,4つの項目で有意差が認められた(表4の網掛け部分)。

指導内容   
指導時間の
確保
F(2,181)
=8.702
p<.01小,中>高
情報通信機器
の利用技術の
向上
F(2,181)
=5.796
p<.01小,中>高
指導力向上の
ための研修
F(2,181)
=3.736
p<.05中>高
学校における
情報通信機器
の普及・整備
F(2,181)
=10.752
p<.01小,中>高
▲表5 分散分析で有意差が認められた項目

 小中学校の教員は,各教員の裁量時間の範囲内で,情報モラルの全ての指導内容を取り扱うことは難しいと考えていることが推察される。従って,小中学校の教員は,学校の方針のもと,適切な指導計画が作成され,教育課程上で情報モラルの指導時間が設定されることが必要であると考えていると思われる。
 現状では,小中学校の子どもたちは,生活する地域や家庭環境によって,コンピュータや携帯電話などの情報通信機器の所持率や利用実態に差があると考えられる。情報通信機器の利用経験や知識が不足している子どもたちに対して,情報モラルの指導を行うには,視聴覚機器を使い,わかりやすく,体験的な授業を行う必要がある。そのために,小中学校の教員は情報通信機器の普及・整備が必要であると考えていると思われる。
 現行の学習指導要領下では,小中学校における情報モラル教育の指導経験者は半数に満たなく※注7,実際の情報モラル教育は,校務分掌で定めている情報担当者に依存する傾向が示されている※注8。しかし,新学習指導要領下における情報モラル教育は,各教科,道徳等で指導を行うため,特定の教員に依存しない体制が必要とされる。そのため,小中学校の教員は,校内外の研修の機会を通して,情報モラルに関する指導力の向上を図る必要性を認識していると推察される。
5.おわりに
 現行の学習指導要領より,新学習指導要領では,小中学校での情報モラル教育は強化されるが,指導時間の設定,指導経験不足,情報通信機器の整備などの様々な改善事項があるため,各学校の指導状況に差が生じることが考えられる。従って,高等学校においては,入学後,早い時期に各学校での指導状況と生徒の実態の把握に努め,実態に即した,適切な指導計画を作成することが必要である。
引用文献・参考文献
注1:文部科学省,『小学校学習指導要領』,東京書籍,2008
注2:文部科学省,『中学校学習指導要領』,東山書房,2008
注3:文部科学省,『高等学校学習指導要領』,2009
注4:埼玉県教育委員会,『「情報モラル教育」指導資料』,埼玉県教育委員会,2005
注5:日本教育工学振興会,『すべての先生のための「情報モラル」指導実践キックオフガイド』,日本教育工学振興会,2005
注6:文部科学省,『教育の情報化に関する手引き』,2009
注7:富山市教育委員会,「平成19年度 富山市小・中学校 情報機器活用状況に関する調査結果」,2007 ,pp1-2
注8:秋田県総合教育センター研究・情報教育班,「情報モラル教育に関するアンケート調査集計結果分析報告」,2008 ,pp1-3
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