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論説
情報入試研究会の取り組み
─情報入試実現に向けたロードマップ─
大阪電気通信大学/情報入試研究会 中野 由章
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1.情報入試研究会発足の経緯
 2003年度から高等学校において学習指導要領が改訂され,それに伴い大学入試も2006年度からこれに対応した内容になった。ここで注目すべきことの一つに,「教科『情報』の新設」が挙げられる。普通教科「情報」は必履修教科であり,原則としてすべての高校生が学習する。また,大学においても,文理を問わず情報系学部学科の開設が増えていたこともあり,2006年度以降の大学入試において「情報」が出題されることが期待された。
 しかし,2006年度の大学入試において「情報」を出題したのは,国立大学では東京農工大学と愛知教育大学のみ,私立大学も14大学が出題するにとどまった。その後,若干増加したものの,近年では再び減少し,現在では約20大学が出題するにとどまっている。そして,その受験者数も極めて少なく,出題している大学も辛うじて「情報」入試を維持しているというところが少なくない。
 大学入試センター試験においても,以前は「数学I・A」と「数学II・B」それぞれに,BASICプログラムが選択問題として存在したが,現在は「数学II・B」に残すのみであり,しかも,次期学習指導要領に基づく試験においてはそれすらも廃止されることが決定している。また,「情報関係基礎」の受験者は例年六百人台で推移しており,毎年五十万人以上が受験する大学入試センター試験において,極めて微小な規模でしかない。
 国際的にとらえてみると,初等中等教育における情報教育は重要視される傾向にあり,科学技術立国を標榜する我が国がこの国際的な潮流に抗っているような現状を憂慮する関係者は少なくない。
 そこで,このような状況を打開するために,情報入試として,どのような範囲・内容・水準・試験方法の問題が適切であるかについて意見を交換し,その成果として具体的な入試問題の試作を行い,広く一般に公開することを目指し,「情報入試研究会」を設立することとなった。
2.情報入試フォーラム2012
 情報入試研究会(設立準備会)がまず行ったのは,「教科『情報』入試問題研究フォーラム」(以下;情報入試フォーラム2012)の開催である。なお,情報入試についてのフォーラムは,2007年6月9日に情報処理学会初等中等教育委員会主催で「大学入試と情報フォーラム2007」(以下;情報入試フォーラム2007)が行われている。この時の実行委員のうち4名が情報入試フォーラム2012の実行委員に含まれており,情報入試フォーラム2007の内容を踏まえて,現在までの情報入試の総括と新課程で学んだ高校生が大学を受験する2016年度からの情報入試の方向性について検討することとなった。情報入試フォーラム2012の概要を次に示す(図1)。
情報入試フォーラム2012プログラム
日時:2012年3月3日(土) 10:30 〜 17:00
場所:早稲田大学 西早稲田キャンパス
10:30 〜 10:40 開催あいさつ
10:40 〜 11:25 「情報」入試の意義と必要性
11:25 〜 12:10 「情報」入試の検討項目と課題
13:30 〜 15:20 各大学から問題点や課題の報告
15:30 〜 17:00 全体討議
▲図1  大学入試フォーラム2012の概要

 午前の部は公開で行われ,ここで情報入試研究会が正式に発足し,代表に筧捷彦先生(早稲田大学)と村井純先生(慶応義塾大学)が就任した。事務局は植原啓介先生(慶応義塾大学)のお世話になり,研究会には20を超える大学の教員が参加している。また,この情報入試研究会が主体となり,2013年度から3か年にわたって模擬情報入試を試行し,その結果を踏まえて2016年度から本格的に情報入試を各大学で導入できるよう活動していくことが決定した。その作業部会として「情報入試問題試作ワーキンググループ」(以下;問題試作WG)が設置されている。
 午後の部は非公開とし,情報入試を行なっている大学から現状の報告が行われ,その後,各大学の情報入試に対する考え方や課題などについて討議した。
3.問題試作WGの活動
 問題試作WGは情報入試フォーラム2012以降,オンライン上で議論を続けてきた。しかしながら,作業工程に遅れが出てきたことや一度全員でじっくり議論する必要があるとの意見が出たため,次の内容で問題検討会議を合宿形式で実施した(図2)
第1回問題検討会議
日時:2012年9月29日(土)〜 30日(日)
内容:問題作成方針,問題案の検討
参加者:8名
第2回問題検討会議
日時:2012年12月15日(土)〜 16日(日)
内容:試験実施要領検討,問題作成
参加者:10名
第3回問題検討会議
日時:2013年1月26日(土)〜 27日(日)
内容:試験実施要領検討,問題作成
参加者:10名
第4回問題検討会議
日時:2013年3月23日(土)〜 24日(日)
内容:試験実施要領確認,問題確認
▲図2 問題検討会議の動き

 毎回,初日は13:00から21:00まで,翌日は8:00から夕刻まで,小休止は入れるものの,基本的に連続して作業を行なっている。
 場所は,慶応義塾大学日吉キャンパス内で行なうことを基本とし,一部日程のみ慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスや筑波大学東京キャンパス文京校舎などでも行った。いずれも素晴らしい環境や施設の中で,試作問題の検討を集中して行なうことができた。
 第1回目に問題作成方針や出題形式について議論し,その後,問題案の検討を行なった。また,翌月に行われる高校教科「情報」シンポジウム2012(以下;ジョーシン2012)で公開する試作問題の作問を行った。
 第2回目と第3回目は第1回目で試作して公開した問題に対する評価,ならびに2013年度試行試験の本試験問題と予備問題の作成を行い,試行試験の具体的な実施方法についても議論した。
 第4回目は本稿執筆段階ではまだ実施されていないが,試験問題確定と実施要領の詳細決定を予定している。
4.試作問題の内容
 出題範囲・内容・水準については,「高校における情報教育の達成度合いを正しく評価し,また情報教育に対する適切な指針を提供する上で,関係者が共に認める,適正な範囲・内容・水準を持った試験問題・試験方式」を目指すこととした。
 出題形式については,情報入試がさまざまな大学の多様な試験方法で利用されることや,公平・公正な採点の実施容易性を考慮し,多肢選択式と記述式を併用することになった。なお,記述式については,数十字程度といった字数制限を設定することにした。
 次に試験については,「情報共通」「社会と情報」「情報の科学」の3領域に分けて出題することにした。実際の試験においては,「情報共通」が必答,「社会と情報」と「情報の科学」が選択となることが考えられるが,試行試験においては3領域とも必答とし,90分(各領域30分見当)で実施することとした。実際の入試においては,多肢選択式のみや記述式のみ,60分や120分といった形式で実施されることも想定されるので,どのような試験に対しても参考となるデータを取得できるよう配慮した。
 試験問題の内容は知識を問う問題も出題するが,思考力を問う問題をできるだけ多く出題するよう努めることとした。特に,「情報の科学」と「社会と情報」については,問題文もボリュームのある,じっくり考えさせるようなものを目指した。
 これらの議論を経て,ジョーシン2012において提案した試作問題の内容は次のようなものになった(図3)。なお,これはこの試作問題に関するものであり,今後の試行試験で出題する内容まで規定するものではない。
情報入試試作問題の出題内容
「情報共通」
以下のような内容の小問で構成する。
・ディジタル化の利点と欠点
・コンピュータ内部の情報の表し方
・ネットワークセキュリティ
・情報蓄積の工夫
・LANの配線
・情報に関する法と責任(国際的視点,慣習,国内法)
・情報に関する歴史
・情報が社会に与えた影響
・符号化,暗号,圧縮,記号変換,ビット列の変換など
「情報の科学」
以下のような内容の大問ニつで構成する。
・プログラミング
構成要素を組み立てる(空欄補充,順序整列を含む)
・データベース
テーブル設計のようなもの
「社会と情報」
以下のような内容の大問ニつで構成する。
・社会に対する影響
情報システムやコミュニケーションツールとしてのメ
ディアの影響など
・メディア
メディアリテラシー的なもの
▲図3 情報入試試作問題の出題内容
5.高校教科「情報」シンポジウム2012
 高校教科「情報」シンポジウムは,情報処理学会初等中等教育委員会が毎年実施しているが,今回は2013年度から施行される新学習指導要領の下で,高校での教科「情報」の教育成果をどのような形で大学入試において問えるのか,大学入学後の情報教育に繋げていくのか,さらには,どのような形での高校・大学の連携を進めていけるのかという議論を行った。ジョーシン2012の概要を図4に示す。
高校教科「情報」シンポジウム2012
日時:2012年10月27日(土) 10:30 〜 17:00
場所:早稲田大学 西早稲田キャンパス
10:30 〜 10:40 オープニング
10:40 〜 11:20 情報教育と情報処理学会の活動
11:20 〜 12:00 次期指導要領に向けた情報教育内容
の提案
13:30 〜 14:00 「情報」入試に向けた活動
14:00 〜 14:30 明治大学情報コミュニケーション学
部が実施する「情報総合」入試
14:30 〜 15:00 高校「情報」と大学教育の接続
15:15 〜 16:45 パネルディスカッション「情報教育
の発展のために」
16:45 〜 17:00 クロージング
▲図4 高校教科「情報」シンポジウム2012の概要

 問題試作WG第1回問題検討会議で試作した問題に対し広く批評を受けるため,ジョーシン2012で試作問題を公開するとともに情報入試を中心にさまざまな議論が行われた。
6.情報入試フォーラム2013
 ジョーシン2012で公開した試作問題について,その考え方を解説し,2013年5月18日(土)に計画している模擬試験の計画についての説明,さらに,今までに実施された情報入試の概要や,これから大学入試に情報を導入する大学のねらいなどを中心とした内容で,情報入試フォーラム2013が実施された(図5)。
情報入試フォーラム2013
日時:2013年3月3日(日) 10:30 〜 17:00
場所:筑波大学 東京キャンパス 文京校舎
10:30 〜 10:40 開会挨拶
10:40 〜 11:20 模試実施概要説明
11:20 〜 12:00 試作問題#001 解説
13:00 〜 13:40 愛知教育大学 普通教科「情報」入試
10年の総括
13:40 〜 14:20 明治大学情報コミュニケーション学
部 2013年度情報入試の報告
14:20 〜 15:00 慶應義塾大学 総合政策学部/環境情
報学部 2016年度入試について
15:20 〜 16:50 パネルディスカッション:情報入試
のこれから
▲図5 情報入試フォーラム2013の概要

 当日は大学生,高校教員,大学教員など83名が参加し,情報入試について活発な議論が行われた。筧先生による挨拶に続き,植原先生より5月18日(土)に実施する試行試験についての説明が行われ,参加者から模試の形式や団体受験の方法などに関する質問があった。さらに,昨秋公開した試作問題#001について詳説があり,出題形式に対する意見が参加者から寄せられた。午後からは,10年にわたって情報入試を実施してきた愛知教育大学の事例紹介や今年度から情報入試を始めた明治大学情報コミュニケーション学部の報告があった。また,村井先生からは2016年度に情報入試を始める慶應義塾大学についての話があった。これらの事例をもとに,情報入試の意義,課題やメリットなどについて議論が行われた。パネルディスカッションでは,大学教員からは情報入試を実施することへの期待と課題,高校教員からは高校生に実施したアンケート結果,大学生からは受験生の立場から思うことなどについて発言があり,活発な議論が交わされた。最後に村井先生より決意確認の挨拶があり,閉会となった。
7.情報入試模擬試験と今後
 第1回模擬試験は次の要領で行うことが,問題試作WG第3回問題検討会議で確認されている。
第1回情報入試模擬試験
日時: 5月18日(土)14:00 〜 15:30
会場: 東京(50人)早稲田大学(西早稲田キャンパス)
   神奈川(150人)慶應義塾大学(湘南藤沢キャンパス)
   中部(50人)調整中
   関西(50人)大阪電気通信大学(寝屋川キャンパス)ほか
試験範囲: 「情報の科学」「社会と情報」(全問必答)
受験料: 無料
受験対象: 制限なし
申し込み: 4月1日(月)〜 19日(金)に情報入試研究会の
Webページ(http://jnsg.jp/)から。会場ごと定
員になり次第締め切り。団体受験は事務局に連絡。
▲図6 第1回情報入試模擬試験の概要

 詳細については,情報入試研究会のWebページ(http://jnsg.jp)を参照されたい。
 情報入試フォーラム2012において明治大学情報コミュニケーション学部が,情報入試を2013年から実施することが発表された。また,2012年12月には,慶応義塾大学の総合政策学部/環境情報学部が2016年度から情報入試を実施することが発表された。
 教科「情報」が始まって10年が経過し,2013年度から内容が刷新され,教科「情報」の果たすべき役割がますます大きくなっているにもかかわらず,それが広く理解されているわけではない。 ただ,明治大学や慶応義塾大学が動き出し,情報入試研究会が模擬試験を実施することで,情報入試の重要性が広く教育関係者の間で共通理解されるような流れになることを,大いに期待したい。
 最後に,情報入試問題の一例を次ページに示す。 情報入試研究会がジョーシン2012において公開(※注1)した試作問題から一部抜粋,改変を加えている。
情報入試問題の一例
※注1:「 情報入試研究会試作問題」(http://jnsg.jp/wp-content/uploads/2013/01/joshin2012aki-johoexam-shisaku.pdf)参照。解答も掲載されている。
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